炭水化物を3年間5%にした医師が「老けた」と語る理由 ― 糖質制限は「断つ」より「置き換える」

炭水化物を白いパンから全粒粉パンに置き換える

「糖質制限、やりすぎていませんか?」

ごはんやパンを抜くと体重が落ちやすいと聞いて、炭水化物をできるだけ減らしている方もいるでしょう。一方で「このまま続けて大丈夫?」「肌への影響は?」と気になっている方も多いはずです。

この記事では、ある美容皮膚科医が著書『美肌循環』で振り返る糖質制限ダイエットの体験を入り口に、極端な制限がなぜリスクになりうるのか、そして「断つ」より「置き換える」という考え方を紹介します。食事と肌の関係の全体像はダイエットと肌の基本ガイドにまとめています。

糖質制限で「老けた」― 炭水化物を3年間5%にした医師の体験談

『美肌循環』の著者は美容皮膚科医です。20代の頃、渡米をきっかけに食生活が変わって体重が増え、帰国後に糖質制限ダイエットに挑戦したそうです。

著者が引用している、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、炭水化物(糖質)の摂取基準値は50〜65%。それに対して著者は、わずか5%まで制限する食生活を3年ほど続けました(『美肌循環』)。

体重は一気に落ちたものの、一過性脳虚血症という「脳梗塞の前兆といわれる状態」になるほど体調が悪化。それまでなかったほうれい線がくっきり現れ、明らかに「老けたな」という顔になっていた、と振り返っています。

ただし、これは一人の方の体験談です。著者自身も「個人差もありますが、私の場合」と前置きしています。糖質制限をすれば誰にでも同じことが起きるわけではなく、健康な方にそのまま当てはまるとは限りません。

また、ここで紹介したのは著者自身の体調の話です。ご自身の体調をこの話に当てはめて判断せず、食事を減らしている最中にいつもと違う体調の変化を感じたら、医療機関に相談してください。

その後、著者は考えを改めています。同書の別の章では、自身の経験にふれながら、「食べ過ぎは禁物ですが、美肌と健康のために適量の糖質は摂りましょう」とすすめています。

糖質制限はやめた方がいい? 極端に減らすことがリスクになる理由

体験談だけでなく、立場の違うほかの本の説明も見てみましょう。

栄養が足りなくなると、肌にも影響しうる

『美肌循環』は、炭水化物や脂質など特定の栄養素をカットする食事法は「体に良いはずがありません」とし、健康な肌をつくるための栄養が不足して、肌荒れや乾燥肌などにもつながると書いています。

偏ったダイエットは、かえって代謝を落とすことがある

エステティシャン向けの資格テキスト『理論と実践 エステティシャン』は、特定の食品だけを食べたり食べなかったりするダイエットでは、必要な栄養素が不足して代謝が落ちることがあり、太りやすい身体をつくることにもなる、と説明しています。そのうえで「適量をバランスよく食べることが大切」としています。

炭水化物についても同書は、糖質は体内でつくることができるため栄養学的な必要量は決められていないとしつつ、「糖質を摂らないと身体に不調が生じる」と補足しています。同書は脂質についても、極端に少なくするダイエットでも、ホルモンバランスがくずれ新陳代謝がうまくいかなくなると書いています。どれか一つの栄養素を極端に減らすことに注意したい、という点で2冊の見方は重なります。

「少なければ少ないほどいい」とは限らない

『栄養学ベーシック』は、インスリン(食事をしたときに分泌され、栄養素を細胞に取り込み、蓄えたり使ったりするのを促すホルモン)を「少なければ少ないほどいい」、だから糖質も少ないほどいい、と考える人もいると紹介しています。

そのうえで同書は、糖質のとりすぎでインスリンが効きにくくなっている人が多いのは事実だろうとしつつ、血糖のコントロールには糖質の量とインスリン以外にも多くの要素が関わる、と指摘。糖質制限で問題が解決するとは限らない、という立場です。

こうして見ると、注意したいのは「減らすこと」そのものより「極端に断つこと」だと言えそうです。栄養不足と肌の関係は、たんぱく質・鉄・亜鉛を取り上げた前回の記事でも紹介しています。

「断つ」ではなく「置き換える」― 白い炭水化物から茶色い炭水化物へ

『美肌循環』が提案しているのは、「白い炭水化物」から「茶色い炭水化物」への切り替えです。茶色い炭水化物とは、精製されていない食べ物のこと。著者は次の例を挙げています。

  • お米なら:玄米や胚芽米
  • パンなら:全粒粉パン

著者は砂糖ならきび砂糖も例に挙げていますが、砂糖であることに変わりはありません。この記事では、ごはんとパンの置き換えを中心に紹介します。

著者は、茶色い炭水化物は血糖値を上がりにくくし、「糖化」をおさえることにつながると説明しています。糖化とは、必要以上にとった糖が体内のたんぱく質と結びつき、AGEs(終末糖化産物)という物質ができること。著者は、褐色のAGEsが、肌が黄色っぽく見える「黄ぐすみ」の正体だと説明しています(『美肌循環』)。糖化と肌の関係は、別の記事であらためて取り上げます。

糖質を断つのではなく置き換える考え方を示した図解

ポイントは、炭水化物をゼロにせず、選び方を変えることです。朝のパンを全粒粉パンにする、白米に玄米を混ぜてみるなど、できるところからで十分。食べる楽しみを手放さないほうが、長く続けやすくなります。

著者が続けている小さな習慣 ― 食事の30分前にナッツを5〜6粒

『美肌循環』の著者が、血糖値を急に上げないために続けているのが、「食事の30分前にナッツを5〜6粒、よく噛んで食べておく」という習慣です。クルミにはポリフェノール、アーモンドやピーナッツにはビタミンEが含まれているとして、著者はナッツをすすめています。

ただし、これは著者個人の実践法で、研究で効果が確かめられた方法として紹介されているわけではありません。「試してみる価値のある工夫のひとつ」くらいに受け止めてください。ナッツにアレルギーのある方は取り入れないでください。

まとめ:糖質制限は、極端さより「続けられるバランス」を

  • 炭水化物を3年間5%まで減らした美容皮膚科医は、体調をくずし「老けた」と振り返っています。ただし、これは一人の体験談です
  • ほかの本も、特定の食品や栄養素を極端に減らすことや、「少なければ少ないほどいい」という考え方に注意をうながしています
  • 現実的な代案は、白い炭水化物を茶色い炭水化物に「置き換える」こと。食前のナッツも、著者の実践法のひとつです

次の記事では、甘いものと肌の黄ぐすみに関わる「糖化」を取り上げます。

よくある質問

Q. 糖質制限はやめた方がいいですか?

A. 一概には言えません。この記事で紹介した本は、特定の栄養素を極端に減らす食べ方に注意をうながしています。また『栄養学ベーシック』は、血糖のコントロールには糖質の量以外にも多くの要素が関わるとして、糖質制限で問題が解決するとは限らないとしています。持病のある方や通院中の方、医師から食事の指示を受けている方は、自己判断で始めたりやめたりせず、主治医に相談してください。

Q. 炭水化物を抜くと、必ず老けますか?

A. そうとは言えません。紹介したのは一人の医師のケースで、著者自身も「個人差もありますが」と書いています。

Q. 白いごはんやパンは食べない方がいいですか?

A. この記事では、「食べない」より「置き換える」という考え方を紹介しました。『美肌循環』では、玄米や胚芽米、全粒粉パンなどの「茶色い炭水化物」への切り替えが提案されています。著者自身も、適量の糖質はとったほうがいいと書いています。

Q. 食前のナッツは毎日食べるべきですか?

A. 必須ではありません。著者の実践法として紹介した工夫のひとつです。ナッツにアレルギーのある方は避けてください。

Q. ダイエット中に体調がおかしいと感じたら?

A. 無理に続けず、早めに医療機関に相談してください。この記事の体験談は著者のケースの紹介で、症状を自分で判断するためのものではありません。

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