「体重は落ちたのに肌がボロボロ」― ダイエット中の肌荒れ・乾燥・くすみと、たんぱく質・鉄・亜鉛の話

食事を見直して体重は落ちたのに、鏡を見ると肌がカサついていたり、顔色がさえなかったり。「前より老けて見える気がする」というご相談をいただくことがあります。
こうしたとき、多くの記事は「カロリーを減らしすぎたから」で話が終わります。でももう一歩ふみこむと、肌をつくる材料になる栄養素が足りていないという説明ができます。この記事では、食事の量や種類を減らしたときに不足しうる栄養素のうち、肌の材料に直接関わる「たんぱく質・鉄・亜鉛」の3つにしぼって整理します。全体像は親記事のダイエットすると肌はどうなる?【総まとめ】にまとめていて、この記事はそのなかの「栄養不足」のパートを掘り下げたものです。
なお以下で紹介するのは栄養学の一般的な説明で、特定の人数・期間を対象にした臨床研究の結果ではありません。必要な量も不足のあらわれ方にも個人差があり、すべての方に同じことが当てはまるわけではありません。
たんぱく質不足で起きること ― 肌の「材料」そのものが足りなくなる
たんぱく質は、20種類のアミノ酸がたくさんつながってできた成分です。エステティシャン向けの業界テキスト『理論と実践 エステティシャン』は、たんぱく質を「身体の主要な構成成分」と位置づけ、筋肉や臓器をつくる主成分であると同時に、酵素やホルモンのもとにもなると説明しています。
肌も例外ではありません。同書によれば、肌のいちばん外側にある角質層(かくしつそう。うるおいを抱え込み、外からの刺激を防ぐ層)はケラチンというたんぱく質が主成分で、うるおいのある肌づくりには角質層が正常であることが条件であり、そのためには良質のたんぱく質(とビタミンB群のパントテン酸)が必要だとされています。同書はまた、しわの予防には皮膚の結合組織をつくる良質のたんぱく質と、それを助けるビタミンCが大切だとしています。
そのたんぱく質が不足するとどうなるか。同書は、不足すると体力が低下し、内臓や皮膚、毛髪など身体のあらゆる部分に影響すると記しています。極端な食事制限で食べる量そのものを減らすと、材料の供給が細くなってしまう、というイメージです。
ここで誤解されやすいのがコラーゲンです。『人体の旅』は、膵臓病学を専門とする弘前大学の丹藤雄介博士の解説を交えながら、食べたたんぱく質は消化酵素によって一度バラバラのアミノ酸にまで分解されてから吸収され、体内であらためて必要なたんぱく質につくり直されると説明しています。つまりコラーゲンは「そのまま肌に届くもの」ではなく、材料として使われるものです。内側と外側のケアの役割の違いは、サプリと化粧品、結局どっちが効くの?でも書いています。

鉄不足で起きること ― 貧血・倦怠感、そして顔色の話
鉄は、1日の摂取量が100mg未満の「微量元素」と呼ばれるグループのひとつです。『コスメマイスター検定テキスト』は、鉄・亜鉛・銅・マンガン・ヨウ素・モリブデン・セレン・クロム・コバルトの9種類を挙げ、これらは生命活動に欠かせない成分で、その欠乏は健康に大きな影響を与えると説明しています。
そのうえで同書は、女性に多いのが鉄の不足であり、生理のある女性の多くが鉄分不足ともいわれること、不足すると貧血になりやすくなるほか、慢性的な倦怠感を感じることもあると述べています。『理論と実践 エステティシャン』も、ミネラルのなかで不足しやすいものとしてカルシウムと鉄を挙げています。
肌との関係は、断定を避けて読んでいただきたい部分です。『理論と実践 エステティシャン』は、顔色の良し悪しは血液中のヘモグロビン(鉄とたんぱく質からできた成分)の量と関係しているとしたうえで、血行不良によるくすみ・くまには鉄分と良質のたんぱく質、そして鉄分の吸収をよくするビタミンCをとるとよい、という考え方を示しています。これは業界テキスト側の見解であり、「鉄をとればくすみがなくなる」という話ではありません。顔色や血色は全身の状態とつながっている、という受け止め方が現実的です。
そして大切な前提として、貧血かどうかの判断は医療機関の領域です。立ちくらみ、動悸、息切れ、強い倦怠感が続くといった場合は、自己判断でサプリメントを足す前に内科や婦人科にご相談ください。服薬中の方が、通院や服薬を自己判断でやめないことも大切です。
亜鉛不足で起きること ― 味覚・肌・髪に出ることがある
亜鉛も、微量元素のなかで欠乏が指摘されているもののひとつです。『コスメマイスター検定テキスト』によれば、亜鉛はさまざまな酵素反応に関わっていて、不足して問題になるのは味覚障害。舌が味を感じる働きに関わるため、不足すると味が分からなくなり、それが原因で食欲不振になって体調を崩すことがあるとされています。
同書はさらに、不足すると脱毛や皮膚炎を起こすこともあると記しています。亜鉛を多く含む食品として挙げられているのは、牡蠣(かき)、ゴマ、レバー、小魚など。鉄はレバー、貝類、魚、緑黄色野菜が供給源とされています(『理論と実践 エステティシャン』)。どれか一つをたくさん食べるのではなく、食事の中に少しずつ戻していくくらいがちょうどよいでしょう。
肌荒れや抜け毛には、栄養以外にもホルモン、ストレス、睡眠などさまざまな要因が関わります。「亜鉛が足りないから」と決めつけず、長く続く症状は皮膚科にご相談ください。
「断つ」より「置き換える」― 栄養を保ちながら体重と向き合う
ここまで見てきたとおり、肌のトラブルは「食べる量を減らしたこと」そのものより、「材料まで減ってしまったこと」に関係していると考えられます。
『理論と実践 エステティシャン』は、体重を落とすために特定の食品だけを食べたり食べなかったりするダイエットでは必要な栄養素が不足して代謝が落ちることがあり、それによって「太りやすい身体をつくることにもなる」ため、適量をバランスよく食べることが大切だと明記しています。油についても同じで、脂質を極端に少なくするダイエットはホルモンバランスが崩れ、ビタミンの吸収効率が下がり、新陳代謝がうまくいかなくなるとしています。
食事を見直すときは、「引き算」より「置き換え」の発想が続けやすくなります。
- 主食を減らすときも、肉・魚・卵・大豆製品は減らしすぎない
- 間食を我慢するより、たんぱく質を含むものに置き換える
- 油を抜くのではなく、魚や植物油など質を選ぶ
- 鉄・亜鉛の供給源になる魚介やレバーを、週に何回か食卓に入れる
1日に必要な量は年齢や活動量によって変わるため、この記事では具体的な数字は出していません。目安を知りたい方は、厚生労働省の食事摂取基準などをご覧ください。
ちなみに同書によれば、エネルギー量は1gあたりたんぱく質4kcal、糖質4kcal、脂質9kcalです。たんぱく質のおかずを1品減らしても浮くカロリーは大きくないのに、肌の材料は減ってしまう。これが、たんぱく質を「減らす対象」にしないほうがよいと私たちが考える理由です。
サプリメントは食品であり、不足しがちな栄養を補って食生活を整えるための選択肢のひとつです。食事の代わりになるものではありません。まずは1日の食事を書き出して、たんぱく質のおかずが何回登場しているかを数えるところから始めてみてください。
よくある質問
Q. たんぱく質は多くとればとるほどよいのですか?
いいえ。『理論と実践 エステティシャン』は、たんぱく質は脂質や糖質と違って貯蔵できないため、過剰に摂取すると腎臓に負担をかけるので注意が必要だと記しています。同書はまた、たんぱく質・アミノ酸は一定期間で分解・排泄・補充を繰り返しているため、常に適量をとることが重要だとしています。
Q. 鉄はサプリメントでとったほうが早いですか?
不足が気になる場合でも、まずは食事からが基本です。『理論と実践 エステティシャン』は、鉄はビタミンCによって吸収が高まると説明しています。ただし、貧血かどうか、どのくらい足りていないかは血液検査でしか分かりません。数値の目標を自分で決めて追いかけるのではなく、気になる症状があるときは医療機関にご相談ください。
Q. 栄養を足せば、今あるシミやしわはどうにかなりますか?
栄養不足の話と、シミやしわのケアの話は分けて考えてください。この記事で紹介したのは「肌の材料が足りなくなる」という栄養学の説明であり、食べ物やサプリメントで今あるシミがなくなる、という性質のものではありません。気になるシミやしわがある場合は、皮膚科や美容医療の専門家にご相談ください。
まとめ
体重が落ちたあとの乾燥やくすみは、肌だけの問題ではなく、肌をつくる材料が減っているサインかもしれません。
- たんぱく質: 角質層のケラチンをはじめ肌の主要な材料。不足すると皮膚や毛髪を含め全身に影響するとされています
- 鉄: 女性に不足しやすいミネラル。不足すると貧血や慢性的な倦怠感につながるとされ、業界テキストでは顔色や血色との関係も指摘されています
- 亜鉛: 不足すると味覚障害のほか、脱毛や皮膚炎を起こすこともあるとされています
大事なのは「断つ」ことではなく「置き換える」こと。そして、気になる症状が続くときは、自己判断で栄養だけに答えを求めず、医療機関の力を借りることです。

