食べたコラーゲンやビタミンは体の中でどうなる?『人体の旅』を論文で読む

鮭やきのこ、ブロッコリーの朝ごはんを食べる日本人女性の手元

食べたコラーゲンは肌のコラーゲンになるのか、ビタミンCはまとめてとってもよいのか。口に入れた栄養の行方は、身近なわりに知られていません。今回は消化と吸収の本『人体の旅』を入口に、要点を4つ取り出して論文で確かめ、毎日の暮らしのヒントを添えます。

『人体の旅』はどんな本?

食べ物が口から喉と食道、胃、膵臓と胆嚢、小腸、大腸へと進む道のりを、臓器ごとにたどる本です。後半ではビタミンやミネラルの吸収や、栄養の基準の資料も扱います。テーマごとに研究者への取材がはさまれ、図鑑のように読めます。食べ物が体の中でどう姿を変えるかを順に知りたい人や、「何を食べるか」の前に「体がどう受け取るか」を知りたい人に向いています。

小腸の内側はどれくらい広い? ― 広げるとバドミントンコートの半分ほど

本では

小腸の内側には輪のようなヒダが約800並び、表面を高さ1mmほどの突起(絨毛)が覆い、その細胞にはさらに細かな突起(微絨毛)があります。この凹凸のおかげで、内側は平らな管の60〜120倍に広がります。広げた面積は平均でおよそ32平方メートル、畳にして20枚ほどで、本はそれを「バドミントンのコートの半分くらい」『人体の旅』とたとえています。栄養素の大半は小腸の前半(空腸)で吸収されます。

論文で確かめると

これらの数字は、消化管の面積を見直した研究と一致しています(Helander & Fändriks, 2014)。人の腸を対象に過去の研究をまとめ直し、健康な人などの腸の組織を顕微鏡で測ったものです(人数は論文の要約に書かれていません)。大腸はそのうち約2平方メートルで、昔からの「テニスコートほど」は大きすぎた、と著者らは述べています。

暮らしのヒント

食べたものはこの広い面で取り込まれ、全身へ運ばれます。本によると、ご飯や魚の消化と吸収には数時間かかります。口に入れたらすぐ肌へ、という近道はありません。だから、「これさえ食べれば」より、毎日の食事を積み重ねることが大切です。

食べたコラーゲンはそのまま肌になる? ― タンパク質は分けてから作り直される

本では

肉や魚のタンパク質は消化酵素で少しずつ切られ、小腸の表面や細胞の中で、最後はアミノ酸1つずつにまで分けられる、と本は説明しています(短いペプチドの入り口があることにも触れています)。アミノ酸は血液で全身に届き、新しいタンパク質の材料になります。いったんばらばらにして組み直すわけです。コラーゲンも、食べたものが「そのままコラーゲンとして体をつくるわけではありません」『人体の旅』と本は書いています。

論文で確かめると

実際には、短いペプチドの形のまま血液に入るものもあります。健康な男性5人が原料の違う3種類のゼラチン分解物を1回ずつとり、24時間血液を調べた研究では、血液中のヒドロキシプロリン(コラーゲンに多いアミノ酸)のうち、約30%がペプチドの形でした(Ohara et al., 2007)。健康な人(人数は論文の要約に書かれていません)を4時間調べた研究では、ペプチドは1〜2時間で最も多く、4時間で半分ほどに下がりました(Iwai et al., 2005)。ただし、どちらも血液に入ったかを見た研究で、肌への働きは調べていません。

暮らしのヒント

「この食べ物の成分がそのまま肌になる」とは考えないほうがよいでしょう。肌も髪も、毎日のタンパク質を材料に作り直されています。本は、必須アミノ酸(体でつくれず食事からとる9種類)のバランスがよい食品に肉・卵・大豆などを挙げています。毎食どれか一つを入れる、がおすすめです。

ビタミンCは一度にたくさんとっても吸収される?

本では

ビタミンCは、体がコラーゲンをつくるのに欠かせない成分です。本が紹介する研究では、100〜200mgを境に取り込まれる割合が落ち、余りは尿に出ます。取材を受けた研究者は、およそ400mgで頭打ちになると話し、本は「一度に大量にとっても、あまり意味がないのです」『人体の旅』とまとめています。体に長くためておくこともできません。

論文で確かめると

健康な7人が4〜6か月入院し、1日30mgから2,500mgまで量を段階的に変えて調べた研究があります(Levine et al., 1996)。血しょう(血液の液体部分)の濃度は1日1,000mgでほぼ頭打ちになり、1回500mg以上では取り込まれる割合が下がって、取り込まれた分も尿に出ました。1日1,000mgでは尿のシュウ酸と尿酸が増えています。本の数字は、1回の量なのか1日の量なのかが書かれていないため、論文の数字とそのまま比べることはできません。それでも「取り込みには上限があり、余りは尿に出る」という方向は一致しています。少人数の研究なので、すべての人に当てはまるとは限りません。

暮らしのヒント

まとめてとるより、毎食の野菜や果物から少しずつ、が体の取り込み方に合っていると考えられます。キウイやブロッコリー、赤ピーマンなどを食事のたびに添えるイメージです。

日焼け止めでビタミンDは不足する? ― 肌でもつくられるが、食事からもとりたい

本では

ビタミンの多くは体でつくれませんが、ビタミンDは紫外線を浴びた皮膚の細胞でつくられます。カルシウムの吸収にかかわる脂溶性のビタミンです。ただし本は、「皮膚における合成量だけでは、ヒトの体を維持するには十分でない」『人体の旅』とし、食事からもとる必要があると説明しています。

論文で確かめると

東京で健康診断を受けた5,518人(2019年4月〜2020年3月)の研究では、血液のビタミンDが30ng/mLという基準に届かない人が98%でした(Miyamoto et al., 2023)。著者らは生活習慣が関係している可能性を挙げています。30ng/mLは「十分」とする基準の一つで、基準の置き方で割合は変わります。

日焼け止めについては、人を対象にした研究をまとめた系統的レビュー(実験研究4件、野外試験3件、観察研究69件)があります。実験では日焼け止めでビタミンDの産生がかなり減りましたが、毎日使う無作為化比較試験(くじ引きのように分けて比べる試験)では血中の濃度に差がなく、ふだんの使い方で下がるという証拠は少ない、と結論しています(Neale et al., 2019)。なお、ビタミンDはきのこ類と魚に含まれ、日本人が食事からとる分の8割近くは魚介類からです(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」)。

暮らしのヒント

紫外線対策は、やめずに続けてください。そのうえで、魚介類やきのこを食事に取り入れるのがおすすめです。日焼け止めの選び方は日焼け止めのSPF・PAの意味にまとめています。

この本の限界と、合わない人・注意点

  • 古い数字がある:本は大腸の細菌を100兆個としていますが、2016年に推定をやり直した研究では、体全体で約38兆個(体重70kgの標準的な男性)です(Sender et al., 2016)。
  • 資料は刊行当時のもの:資料編の国民健康・栄養調査は2015年のものです。栄養の基準は最新の「日本人の食事摂取基準」(2025年版)で確かめましょう。
  • ビタミンCの大量摂取:本は大きな問題はないようだと紹介していますが、上の論文では尿の成分の変化が見られました。まとめて多くとるのは避けたほうがよいでしょう。
  • 研究の強さはまちまち:動物実験や少人数の研究の紹介もあり、本自身が結論は早いと断る箇所もあります。「わかっていること」と分けて読みましょう。
  • 合わない人:献立やレシピがほしい人には向きません。おなかの不調が続く人、持病がある人や薬を飲んでいる人は、自己判断せず医師に相談してください。

よくある質問

Q. 日焼け止めを毎日塗ると、ビタミンDが足りなくなりますか?

A. 研究をまとめたレビューでは、ふだんの使い方で血中のビタミンDが下がるという証拠は少ないとされています。日焼け止めは続け、魚介類やきのこを食事に取り入れましょう。

Q. 食べたコラーゲンは、そのまま肌のコラーゲンになりますか?

A. 本は、細かく分けてから吸収され、そのまま体をつくるわけではないと説明しています。健康な男性5人の研究では血液にペプチドが見つかりましたが、肌への働きは調べていません。

Q. ビタミンCはまとめてとったほうがいいですか?

A. 健康な7人の研究では、1回の量が多いと取り込まれる割合が下がり、余りは尿に出ました。毎食少しずつ、がおすすめです。

まとめ

  • 腸の内側は、広げると約32平方メートル(うち大腸は約2平方メートル)。本の数字は論文と一致
  • タンパク質は分けてから作り直される。血液に入るペプチドもあるが、肌への働きは未確認
  • ビタミンCは取り込みに上限があり、余りは尿へ
  • ビタミンDは肌でつくられる分だけでは足りない。ふだんの日焼け止めで下がる証拠は少ない

どの要点からも、「何か一つ」より「毎日の食事」が見えてきます。食事と肌の総まとめやダイエット中の肌荒れとたんぱく質・鉄・亜鉛もあわせてどうぞ。

この記事は本の内容と研究を紹介するもので、医療の助言ではありません。