脂質を抜くと肌が乾く? 良い油・控えたい油とオメガ3の考え方 ― 油はゼロにせず種類で選ぶ

カロリーが気になって油をとことん避けていたら、肌がカサついて粉をふくようになった。そんな経験はありませんか。

これまで、ダイエット中のたんぱく質・鉄・亜鉛の不足や血糖値を急に上げない食べ方を取り上げてきました。今回は「油」がテーマです。脂質の役割と油の種類による違いを、栄養学やエステティックの本の説明から整理します。全体像はダイエットと肌の基本ガイドをご覧ください。

脂質を抜くと肌が乾くのはなぜ? 脂質は体をつくる材料

『理論と実践エステティシャン』によると、脂質はエネルギー源になり、体温の維持にも使われます。細胞膜や神経組織、ホルモンの材料にもなり、ビタミンA・D・E・Kのような油に溶けるビタミン(脂溶性ビタミン)の吸収も助けると説明されています。

同じ本では、体内で作れない「必須脂肪酸」が足りない状態が続くと、育ちや皮膚のトラブルにつながると説明されています。脂質を極端に減らすダイエットは、ホルモンバランスやビタミンの吸収、新陳代謝に影響するおそれがあるという説明です。『美肌循環』の著者も、油を一切避けることに疑問を示し、脂質が不足すると細胞膜が傷むと書いています。『栄養学ベーシック』も、中性脂肪そのものは悪者ではなく、困るのは血液中で増えすぎた状態だとしています。

ただし、肌の乾燥は食べる油だけで決まりません。『美肌図鑑』によると、肌のうるおいを守るのは、天然保湿因子(NMF、角層で水分を抱える成分)、セラミドが主成分の細胞間脂質、皮脂の3つで、洗いすぎでこれらが失われると乾燥につながります。季節や年齢も関わるため、「油を抜けば必ず乾く」とは言えません。材料不足が続くと肌に影響が出る可能性がある、という受け止め方がよいでしょう。

「良い油・悪い油」の前に知りたい、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

油の性質を左右するのは、含まれる脂肪酸(脂質の基本となる部品)の種類です。大きく2つに分かれます(『理論と実践エステティシャン』『栄養学ベーシック』)。

  • 飽和脂肪酸: バター、ラード、牛脂など動物性の脂に多く、室温で固まりやすい。量が多くなりすぎないよう気をつけたい脂とされています
  • 不飽和脂肪酸: マグロ・イワシ・サンマ・サバなどの魚、オリーブ油・ゴマ油・シソ油などの植物油に多く、室温でも液体のまま

とはいえ、1つの油が1種類の脂肪酸だけでできているわけではありません。『栄養学ベーシック』によると、どの油にも複数の脂肪酸が混ざっていて、紅花油はリノール酸、オリーブ油はオレイン酸が中心、というように配分が違います。「良い油・悪い油」と二つに分けるより、組み合わせで考えるほうが現実的です。

油の脂肪酸を飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分け、不飽和脂肪酸をオメガ3・6・9に分けた図

オメガ3とオメガ6とは? 体で作れない2つの脂肪酸

不飽和脂肪酸は、さらに「オメガ3」「オメガ6」「オメガ9」などに分けられます。『栄養学ベーシック』によると、オメガ3にはEPA・DHA・アルファリノレン酸、オメガ6にはリノール酸・アラキドン酸、オメガ9にはオリーブ油に多いオレイン酸が入ります。

このうちオメガ3とオメガ6は、人の体では新しく作れないため、食事からとる必要があります。それぞれが多い食品として、同書は次のものをあげています。

  • オメガ3: 魚、アマニ油、シソ油、エゴマ油
  • オメガ6: コーン油・大豆油・サラダ油などの植物油、ドレッシング・レトルト食品・即席めん・菓子パン・スナック菓子などの加工食品、肉

バランスの目安は「4:1」

『栄養学ベーシック』では、以前の国の栄養所要量で、健康な人の「オメガ6:オメガ3」は4:1が目安とされたと紹介されています。一方、平成25年の国民健康・栄養調査のデータでは、30代以下は男女ともほぼ5:1とオメガ6寄りでした。平成25年(2013年)の、10年以上前の調査である点は割り引いて読んでください。

著者が重視するのは、オメガ3を足すことよりバランスです。先にとりすぎになりやすいオメガ6を見直す、たとえばリノール酸の多い油(紅花油やひまわり油の従来の品種など)を使っているなら、加熱にはオレイン酸の多い油を、加熱しない料理にはアルファリノレン酸の多い油を選ぶ、インスタントやレトルト食品の回数を見直す、という順番をすすめています。

なお『美肌循環』の著者は、アマニ油やえごま油を、酸化しやすいので加熱せずに毎日とっているそうです。あくまで著者個人の習慣です。

控えたい油は? トランス脂肪酸と、熱に弱い油

『栄養学ベーシック』によると、トランス脂肪酸はマーガリンやショートニングなどに多く含まれます。液体の植物油に水素を加えて固める加工(水素添加)の途中で生じるもので、自然界にはほとんどありません。

日本では、食品安全委員会が「通常の食生活では健康への影響は小さい」と考えられるとしています。ただ同書は、これは平均値の話でとりすぎている人もいるはずだと指摘し、若い世代で摂取量が増える傾向にも触れています。著者は「害になることはあっても、益にはならない」として、少ないほどよいという見方です。

油と熱の相性も知っておきましょう。同書によると、油は高温で酸化が進みやすく、酸化しにくい種類ほど加熱調理に向きます。

  • オリーブ油: 酸化しにくく、炒め物などの加熱に向く
  • 大豆油: オリーブ油よりは酸化しやすい
  • アマニ油: 熱で傷みやすいので、ドレッシングなど火を通さない料理に

今日からできる油の選び方 ― 暮らしのヒント

本の説明を、取り入れやすい形にまとめました。目安としてお読みください(根拠の範囲は次の見出しで説明します)。

  • 油はゼロにせず、種類で選ぶ。極端な制限が肌に響く話は糖質制限の記事でも紹介しました
  • 魚(サバ・イワシ・サンマなど)を食卓に取り入れる。『美肌循環』の著者は手軽なサバ缶をすすめています
  • アマニ油・えごま油は加熱しない使い方で
  • 加工食品・菓子パンや、油を多く使う料理(揚げ物など)は、やめるより頻度を見直す
  • 炒め物には、オリーブ油など酸化しにくい油を

なお、食べる油と肌に塗る油は別ものです。『美肌図鑑』の著者は、食用の油は化粧品用より不純物が多く刺激になりうるとして、食用オイルを化粧に使うことはすすめていません。

油と肌について、分かっていること・分かっていないこと

  • 脂質の量や種類を変えて肌がどう変わったかを、人数や期間を示して確かめた研究は、紹介した本には載っていません。健康な方にそのまま当てはまるとは限らず、個人差もあります
  • 肌の乾燥には、洗いすぎや季節、年齢など食事以外のことも関わります

健康診断などで脂質の値を指摘された方、医師から脂質のとり方について指示がある方、通院中・服薬中の方(特に血液をサラサラにする薬を飲んでいる方)、魚などにアレルギーのある方は、自己判断で食事を変えず、医療機関に相談してください。妊娠中・授乳中の方も主治医に相談しましょう。乾燥やかゆみが強いとき、長引くときは皮膚科へ。

まとめ:油は「抜く」より「選ぶ」

  • 脂質は細胞膜やホルモンの材料にもなるので、ゼロにせず種類で選ぶ
  • オメガ6:オメガ3は、以前の国の栄養所要量で4:1が目安とされていた(『栄養学ベーシック』)。まずオメガ6の多い加工食品などの頻度を見直す
  • トランス脂肪酸は少なめに。アマニ油は加熱せず、炒め物には酸化しにくい油を

今日は1つだけ選んで試してみてください。次の記事では、「ダイエット中の便秘が肌に響く理由 ― 食物繊維『1日18g』の現実」を取り上げます。

よくある質問

Q. 油を完全に抜くと、どうなりますか?

A. 必須脂肪酸の不足は皮膚炎などの原因になり、極端な脂質カットはホルモンバランスやビタミンの吸収に影響しうると説明されています(『理論と実践エステティシャン』)。ゼロにせず種類を選ぶのがおすすめです。

Q. オリーブ油なら、たくさん使っても大丈夫ですか?

A. 量の気づかいは必要です。脂質は1gあたり9kcalと、たんぱく質や糖質よりエネルギーが多く、とりすぎれば体重が増えやすくなるとされています(『理論と実践エステティシャン』)。

Q. アマニ油は毎日とるべきですか?

A. 必須ではありません。毎日とるのは『美肌循環』の著者の習慣です。魚からとる方法もあります。

Q. 揚げ物は食べないほうがいいですか?

A. やめる必要はありません。揚げ物や菓子パンなどが続いていないか、頻度を見直すところから始めましょう。

Q. 油をとると皮脂が増えて、ニキビになりますか?

A. 『理論と実践エステティシャン』では、皮脂の量に影響するものとして、季節や気温などと並んで糖質や脂質のとり方があげられています。ただ、食べる油とニキビの関係を確かめたデータは本になく、個人差もあります。ニキビが続くときは皮膚科に相談しましょう。

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